睡眠障害

睡眠障害は、広く睡眠に関する病気全般を指す言葉で、夜間の睡眠が障害されるもの、日中の眠気を呈するものが含まれます。2005年に作られた睡眠障害国際分類第2版では、85の睡眠障害が取り上げられ、その原因に従って病気としての観点から、8つのグループに大きく分けられています。

睡眠障害の種類

睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)
(1)不眠症
(2)睡眠関連呼吸障害
(3)中枢性過眠症
(4)概日リズム睡眠障害
(5)睡眠時随伴症
(6)睡眠関連運動障害
(7)孤発性の諸症状
(8)その他の睡眠障害
(1)不眠症
睡眠の機会や環境が適切であるが、持続的な睡眠障害があり、日中の生活に支障をきたす場合に不眠症と診断されます。

<不眠症のタイプ>
入眠困難:床についてもなかなか(30分~1時間以上)眠りにつけない。
中途覚醒:いったん眠りについても、翌朝起床するまでの間、夜中に何度も目が覚める。
早朝覚醒:希望する時刻、あるいは通常の2時間以上前に目が覚め、その後眠れない。
熟眠障害:熟眠障害眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られない。

<不眠症の分類>
1. 適応障害性不眠症(同定できるストレスが原因、女性に多い、高齢者に多い)
2. 精神生理性不眠症(あせりがある。眠ろうとすればするほど興奮して眠れない)
3. 逆説性不眠症
4. 特発性不眠症(乳児期あるいは小児期に発症する)
5. 精神疾患による不眠症(不安障害、うつ病など)
6. 不適切な睡眠衛生(不適切な日常生活行動を伴う。カフェイン、ニコチンで覚醒する)
7. 小児期の行動性不眠症(しつけが足りないことが多い)
8. 薬物または物質による不眠症((カフェイン、アルコール、アンフェタミン、コカインなどの服用)
9. 身体疾患による不眠症
10. 物質または既知の生理的病態によらない、特定不能な不眠症(非器質性不眠症、非器質性睡眠障害)
11. 特定不能な生理的不眠
(2)睡眠関連呼吸障害
a 睡眠関連呼吸障害は、睡眠中の呼吸障害により睡眠が質的に悪化する睡眠障害です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、眠ると舌が落ち込んで喉をふさぎ、空気の通りが悪くなるため、ひどいいびきや呼吸停止が起こります。

b 中枢性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸を司る神経機構の機能が悪くなることで、呼吸運動が減弱し停止するために睡眠中に呼吸ができなくなり、高齢者に多いです。
睡眠は浅くなり分断されて、結果として日中の眠気が起こることになります。高血圧、心疾患、脳血管障害、糖尿病などの危険因子となるので治療が必要です。

c チェーンストーク呼吸(心不全、脳梗塞に多い)

d 高地周期性呼吸(高地において、無呼吸と過呼吸を周期的に繰り返す)

e 身体疾患による

f 薬物または物質による(オピオイド常用者)

g 新生児期の原発性睡眠時無呼吸

h その他
(3)中枢性過眠症
夜間の睡眠障害がないにも関わらず、日中に異常な眠気があり、うとうとしてしまう。
ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症、身体疾患による過眠症、薬物または物質による過眠症、精神疾患に随伴する過眠症などがあります。
(4)概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害は、眠りに移行しやすい時に寝つけないで、目が覚めやすい時に起床できない睡眠のタイミングに関連した睡眠障害です。

a 睡眠相後退障害

b 睡眠相前進障害

c 不規則睡眠‐覚醒リズム

d 自由継続型

e 時差型

f 交代勤務型

g 身体疾患による

h 薬剤や物質による
(5)睡眠時随伴症
睡眠時随伴症とは、眠りに入る前、睡眠中、睡眠から覚醒中に起こる望ましくない身体現象の総称で、正常では睡眠中に起こらないような神経活動亢進によると考えられます。

<ノンレム睡眠に関連した睡眠時随伴症>
a 錯乱性覚醒(寝言、歯ぎしりがある。朝、目を覚まそうとする時にもある。)

b 睡眠時遊行症(興奮性行為、好戦的行為、暴力的行為など)

c 睡眠時驚愕症(叫び声や引き裂くような悲鳴)


<レム睡眠に関連した睡眠随伴症>
a レム睡眠行動障害(50歳以上の男性に多い)

b 反復性孤発性睡眠麻痺(金縛り)

c 悪夢障害(ASDやPTSDに伴う)

d 睡眠関連解離性障害(日中にも解離性障害がありPTSDの経験がある)

e 睡眠時遺尿症(睡眠中に不随意な排尿がある。おねしょ)

f 睡眠関連唸り(睡眠中に唸り声を出す。)

g 頭内爆発音症候群(ストレスや過労で増加する)

h 睡眠関連幻覚(薬物使用、過去のアルコール摂取に関連する。青年期に多い。)

i 睡眠関連摂食障害(女性に多い。20歳代に多い。小児期に睡眠時遊行症の既往歴のある事が素因)

j 特定不能

k 薬物または物質による(薬物、薬剤など)

l 身体疾患による(パーキンソン病、レビー小体型認知症など)
(6)睡眠関連運動障害
夜間睡眠中に体の余計な動きが生じることで、それが刺激になって睡眠が障害される。

a むずむず脚症候群では、下肢にむずむずした異常感覚とともに、常に脚を動かしたいという強い欲求が夕方や夜間安静時に出現します。眠ろうと寝床に入るとこうした異常感覚のために寝つけず、眠っても睡眠が安定しません。小児期から成人期までに起きます。
家族内発症が多い。

b 周期性四肢運動障害は、周期的な不随意運動が反復して起こるため、それが刺激になって睡眠が浅くなる。うつ病、注意欠陥、疲労に伴う。
パーキンソン病、ADHD、妊娠、PTSD、アスペルガー症候群、高血圧の患者に多い。

c 睡眠関連こむらがえり

d 睡眠関連歯ぎしり(子供のころが多く、家族的傾向あり)

e その他
(7)孤発性の諸症状
a 長時間睡眠(1日の睡眠時間が10時間以上)

b 短時間睡眠(1日の睡眠時間が5時間未満)

c いびき

d 寝言

e 睡眠時ひきつけ

f その他
(9)その他
 

睡眠障害の治療法

<不眠症以外の疾患に対する治療法>
a 睡眠時無呼吸症候群
重症度によって治療法が異なります。経鼻的持続陽圧呼吸療法(鼻CPAP療法)や口腔内装置などが使われます。

b むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害
抗てんかん薬や抗パーキンソン病薬などが使われます。

c 過眠症
夜間十分な睡眠をとり、規則的な生活を心がける。昼休みなどに短時間の昼寝をうまく取り入れる。眠気に対して中枢神経刺激薬が使用されることがあります。

<不眠症に対する治療法>
a 不眠症
薬物治療
以下の5種類の薬から選んで処方します
1) バルビツール酸系
最近はほとんど使われません。
2) ベンゾジアゼピン系
超短時間型:飲んで1時間未満で最も効き、2-4時間で効果がなくなる
(ハルシオン、マイスリー、アモバン、ルネスタ)
短時間型:飲んで1-3時間で最も効き、6-10時間で効果がなくなる
(レンドルミン、ロラメット、エバミール、リスミー)
中時間型:飲んで1-3時間で最も効き、24時間前後で効果がなくなる
(サイレース、ロヒプノール、ベンザリン、ネルボン、ユーロジン)
長時間型:飲んで3-5時間で最も効き、24時間以上効果が持続する
(ドラール、ダルメート、ソメリン)
3)非ベンゾシアゼピン系
4)メラトニン受容体作動薬(ロゼレム)
5)オレキシン受容体拮抗薬(ベルソラム)


薬物治療の副作用
1) 持越し作用:翌日に眠気が残る
2) 記憶障害(特に飲酒併用に多い)
3) 反跳性不眠、退薬症候
4) 筋肉弛緩作用

非薬物治療
睡眠衛生指導
1)寝酒はしない
2)夕食後はカフェインは飲まない
3)就眠前にたくさん食べない
4)就眠前は喫煙しない
5)適度な運動が安定な睡眠につながる
6)睡眠薬を服用したら30分以内には寝床につく。
7)年をとると必要な睡眠時間は短くなります。あまり長時間眠ることを目標とせず、年齢に合った睡眠時間を考える。
8)何時間眠れたかにかかわらず、毎日同じ時刻に起床する。
9)床の中でテレビを見たり、読書をしたりしない。なかなか眠れなかったら、いったん床から離れ、自分なりのリラックスできることを行う。
10)長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠に悪影響を及ぼす。30分位が良い。

b 睡眠時随伴症
ストレスなどが関与している場合があるので、ストレスの軽減につとめる。睡眠中の寝ぼけ行動に対しては、危険に配慮した寝室環境を整える。薬物療法として、睡眠薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬などが使われます。

c 概日リズム睡眠障害
体内時計をリセットし、通常の一日のリズムに合わせるためには、朝たっぷり光を浴びるようにする。休日でも同じ時刻に起床して、光を浴びるのがコツです。睡眠薬を処方することもある。
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