朝日新聞連載記事
2018年7月21日 土曜日
朝日新聞に連載vol6
Q
4歳の娘が喘息で通院しています。子どもの喘息は成人になると治ると聞きましたが、本当でしょうか。早く治るアドバイスがあれば教えて下さい。
A
小児ぜんそくについてお話しいたします。
≪定義≫
発作性に喘息を伴う呼吸困難を繰り返す気道の慢性炎症性疾患であり、自然にまたは治療により軽快、治癒します。
≪特徴≫
小児は発育の途上にあり、2才未満に生じる事が多いです。アレルギーの家族歴、IgE高値、ダニに対する抗体が陽性の場合にはリスクが高く、早期治療が大切です。有病率は3~5%と高値です。
≪診断≫
小児の診断は、成人よりも困難ですが、アレルギー検査(皮膚テスト、血液検査、鼻汁塗沫テスト)、呼吸機能検査などを行います。
≪治療≫
定期的な吸入ステロイド薬や内服薬の治療だけではなく、①アレルギーの原因の除去②減感作療法③体質の改善、強化④病気に対する不安感の軽減が大切です。また、喘息日誌やピークフロー値の測定などで、喘息の程度を毎日把握する必要があります。
≪予後≫
従来、小児ぜんそくは治りやすく、成長すれば治ると言われていましたが、最近、治癒率は30%~40%と低下し、約40%は成人喘息に移行すると言われています。我が国の死亡率は減少傾向にありますが、まだ海外に比べて高くなっています。定期的な受診、患者や家族の意識の向上、発作止めの乱用を控えるなどが大切です。
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2018年7月 2日 月曜日
朝日新聞に連載vol5
Q
最近、階段を登る時の息切れがひどく、近くの医院を受診したら「肺気腫」と診断されました。完治しないと言われたのですが、本当でしょうか?良い治療法などはありますか?
A
現在、肺気腫と慢性気管支炎を合わせてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼びます。よって、ここではCOPDについてお話し致します。COPD患者の90%は喫煙者であり、非喫煙者に比べて喫煙者ではCOPDの発症リスクが高くなります。ただし、喫煙者全員がCOPDを発症するわけではありません。特に炎症が肺胞に至ってしまう場合(肺気腫)は、肺胞が破壊されてしまうので完治することはありません。日本においては、軽症、中等度のCOPDが多く、特に軽症が多くなっています。COPDにおいては肺がん、心筋梗塞、心房細動などの不整脈が発症することが多く注意する必要があります。従って、治療は、肺癌、心筋梗塞を予防のために禁煙をし、感染予防のために肺炎球菌予防ワクチンを接種し、体力維持のために適度な運動が必要です。また、COPDの症状(呼吸苦)を緩和するためには気管支拡張の吸入が有効です。最近は抗コリン剤β2刺激剤を混合した気管支拡張剤の吸入剤が最も有効である事が示されています。また、COPDは肺がんを併発することが多く、胸部CTなどで経過を観察することも必要です。
<病気分類>GOLDや日本呼吸器学会の分類では、COPDの重症度はスパイロメトリー検査により、1秒量の正常値に対するパーセント(FEV1/predicted FEV1)で、0期(COPD予備軍)およびⅠ期~Ⅳ期5期に分類される。
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