朝日新聞連載記事
2021年9月 9日 木曜日
朝日新聞に連載vol19
Q
昨年の夏、咳がおさまらず、風邪をひいたのかと思っていました。今年、エアコンをつけ始めてからまた咳が出るようになりました。エアコンのカビによって咳喘息になるケースがあるようですが、詳しく教えて下さい。
A
お答えいたします。エアコン使用時に生じる疾患は色々ありますが、咳を引き起こす疾患としては、咳喘息、気管支喘息の増悪などがあります。エアコンの中にあるカビ、ほこり、および冷気が要因であると思われます。咳喘息は放置すると気管支喘息に移行してしまうので、適切な診断、治療が必要です。気管支喘息がある方は、エアコンを使い始めた時に咳、呼吸苦が出現することが多いので注意が必要です。さらに、夏型過敏性肺炎という病気があります。この病気はトリコスポロンというカビを繰り返し吸い込むことにより、肺にアレルギー反応を起こして発症します。夏に発症して、秋には症状がおさまり、数年にわたり繰り返します。主な症状は、咳、呼吸苦であり、悪化すると発熱することがあります。古い家屋に住んでいる方に多く発症することが多く、入院するなど環境を変えることで7日から10日ぐらいで症状が改善します。カビは高温(20~30℃)多湿(60~80%以上)、ごみやほこりなどの栄養源の存在下で増殖しますので、このような環境の改善(エアコンの掃除を含めて)が病気の予防には必要です。。
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2021年7月 9日 金曜日
朝日新聞に連載vol18
Q
40代の夫が大きないびきをかくようになりました。いびきが気になるようであれば、病院受診は必要でしょうか?いびきについて教えてください。
A
旦那さんがいびきをかいているということですね。お答えいたします。いびきは、のどが狭くなって、息を吸うときに狭くなった部分に空気が通過するため、のどが振動して音がでることです。睡眠中はのどを支えている筋肉がゆるむため、よけいにのどが狭くなるのです。日本人は、下顎が小さい人が多く、肥満や飲酒や睡眠薬によっていびきが出現しやすくなります。いびきを引き起こす病気としては、咽頭扁桃の腫大、口蓋垂の腫大、極端な肥満、睡眠時無呼吸症候群などがあります。一時的ないびきだけなら問題はありませんが、継続的ないびきに加えて呼吸停止や日中の眠気を伴う時は睡眠時無呼吸症候群が疑われます。軽傷の場合は、横向きで眠ったり、マウスピースを装着することでいびきが軽減することがあります。しかし、重症になると高血圧、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な生活習慣病を引き起こしますので、早めに呼吸器内科を受診し精密検査および治療をする必要があります。病院によっては、「いびき外来」や「無呼吸外来」という外来もあります。
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2021年4月 5日 月曜日
朝日新聞に連載vol17
Q
たまたま受けた胸部CTで肺の小さな結節を指摘されました。定期的な胸部CT検査を指示されましたが、不安です。
A
お答え致します。肺の結節陰影の原因は、肺癌、臓器癌の肺転移、良性腫瘍、肺結核症、肺真菌症(カビで起こる病気)、肺非結核性抗酸菌症、炎症が治った痕跡などの可能性があります。しかし、血管と血管、骨と血管が重なって、結節影として写ることもあります。肺CT検査の結果、結節陰影があり、その性状から肺癌、肺結核などの重大な病気の可能性が高い場合には、喀痰検査、血液検査(腫瘍マーカー含む)、気管支鏡検査などの検査を行います。また、手術を行って摘出する必要がある場合もあります。しかし、重大な病気であることが、断定できない場合には一定の期間をおいてCT検査を繰り返し、陰影の変化を見て経過観察します。この場合には、不安のために、日常生活に支障をきたすこともあると思います。しかし、悪い病気でない可能性は高いので、心配をしないようにしましょう。肺癌検診で「要精密検査」と判定される人の割合は50人に1人で、さらに精密検査する人の中で50人に1人が肺癌です。つまり、1万人の中で4人が肺癌であると厚生労働省が公表しています。これだけ肺癌と診断されることは少ないです。
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2021年1月 6日 水曜日
朝日新聞に連載vol16
Q
65歳になりました。肺炎球菌のワクチンの接種は必要でしょうか。また、接種の間隔や受け方など教えてください。
A
お答えいたします。高齢者の死亡原因の1位は肺炎であります。肺炎で亡くなる人は、免疫機能の未発達な乳幼児や加齢により免疫機能が低下している高齢者に多いです。肺炎球菌は、主に乳幼児の鼻や喉に常在しており、成人でも保菌者がいます。しかし、肺炎球菌を持つ人が必ずしも肺炎を発症することはありません。従って、免疫力が弱い乳幼児や高齢者やがん患者や慢性疾患を持つ患者は、肺炎を予防するために肺炎球菌予防ワクチンを接種することが大切であります。また、インフルエンザに罹患した後にも肺炎球菌にかかる可能性はあります。従って、インフルエンザワクチン接種と肺炎球菌ワクチン接種は冬に是非おこなってください。さらに今年は新型コロナが流行しており、冬場には予想できないほどの感染者が出現すると思われますので、同時に接種をしてください。対象は、脾摘の患者さん、65歳以上の高齢者、心臓や呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病など免疫低下しており治療が予定されている患者さんが対象です。23価肺炎球菌ワクチンは1回接種後、5年を経れば再度接種することができます。
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2020年10月 6日 火曜日
朝日新聞に連載vol15
Q
喘息で通院していましたが、あまり症状が出ていなかったので、自己判断で医院に行っていませんでした。喘息は秋口になると症状が悪化しやすいと聞き心配です。何か気を付けることはありますか。
A
お答え致します。喘息の中で、特定の抗原が引き金となって発作がおこるものをアトピー型喘息と呼んでいます。一番多いものはハウスダストであります。ハウスダストの中には、ダニやその死骸が多く含まれており、約40種類のダニが1gのハウスダストに約千匹いるといわれています。他に、スギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉があります。抗原を特定できないものは、非アトピー型喘息と呼びます。気温差がはげしい時や気圧が大きく変化する場合に発作が起きやすいです。また、風邪、インフルエンザ、肺炎などの感染症に罹患したときに発作が起き、喫煙や有害物質を吸引し発作が起きたりします。秋になると、気温が低下し、台風が来て気圧が下がり、秋の花粉が飛び、風邪をひきやすくなります。従って、喘息発作が非常に起きやすいです。発作予防の為には、吸入薬を定期的に吸入することが必要です。また花粉症があるのであれば、抗アレルギー剤を併用することも必要です。もしも、風邪をひいたら、早めに治療をして下さい。さらに、インフルエンザ予防のためにワクチンを接種することも必要です。
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