朝日新聞連載記事
2018年2月10日 土曜日
朝日新聞に連載vol4
Q
タバコを吸っている夫(50代)は毎日のように咳・痰がでています。COPDという病気があると聞き、心配です。どのような病気でしょうか。
A
COPDはあまり認知されてないですが非常に重大な病気です。
【概要】
COPDは慢性閉塞性肺疾患の略語で、従来の慢性気管支炎と肺気腫の総称です。タバコの煙などの有害物質を長期に吸入することで生じる肺の慢性炎症性疾患です。
【疫学】
日本では、約530万人の患者が存在しますが、多数が未診断の状態です。厚生労働省によると死亡順位は、2016年では第8位でした。世界の死亡原因では、2004年は4位ですが、2030年には3位になると予想されます。
【原因】
タバコの煙の吸入で気管支に炎症が生じ咳や痰が出現し、さらに、気管支の末端にある房状の袋(肺胞)が破壊され呼吸機能が低下します。【症状】慢性の咳や痰、労作時呼吸苦が特徴的な症状です。
【診断】
長期の喫煙歴があり慢性の咳や痰、労作時呼吸苦があればCOPDが疑われます。確定診断には呼吸機能検査が必要です。CTでは肺胞の破壊が検出され、早期の気腫病変が発見できます。
【治療】
禁煙が第一の治療です。増悪予防のために、肺炎球菌ワクチンなどの接種が勧められます。薬物療法の中心は気管支拡張薬です。さらに、口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練も有効です。低酸素血症に対しては在宅酸素療法などがあります。
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2017年12月14日 木曜日
朝日新聞に連載vol3
Q
長引く咳について教えて下さい。
A
咳の持続する期間の目安としては、3週間以上8週間未満を遷延性咳嗽、8週間以上を慢性咳嗽と定義します。この様な咳を鑑別するための主な検査は、次のものです。
①血液検査
白血球数とCRPで、炎症の有無、アレルギーの関与などが分かります。
②喀痰検査
喀痰を伴う時には、喀痰の培養や細胞診を行い、肺結核症や肺癌などを鑑別します。
③胸部写真
肺結核症、肺癌、COPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)、間質性肺炎などを鑑別します。
④呼吸機能検査
気道狭窄の有無などを調べる検査であり、咳喘息、気管支喘息、COPDの診断に役立ちます。
次に、外来で多く経験する咳喘息についてお話し致します。喘鳴(ぜーぜー)や呼吸困難を伴わない遷延性慢性咳嗽が主な症状です。特徴としては、咳は夜間から明け方に悪化することが多く、成人では女性に多い傾向にあります。風邪、冷気、運動、喫煙、温度差、花粉、ストレスなどが誘因となります。アレルギー反応が陽性の事が多く、呼吸機能検査では、抹消気道閉塞を示すことがあります。治療は、吸入ステロイドが基本です。予後は、成人では約30%が喘息に移行し、再発する事が多いです。
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2017年8月 9日 水曜日
朝日新聞に連載vol2
Q
過敏性肺炎は夏に多いと聞きますが、どのようなものですか。
A
過敏性肺炎は、病原性や毒性のないカビなどを繰り返して吸い込んで生じるアレルギー性肺炎であります。特に夏季(6~10月)に発症するものを、夏型過敏性肺炎と言います。
《原因》
日常の高温多湿な生活環境(台所、浴室、エアコンの内部など)で繁殖しているトリコスポロンというカビを吸い込むことにより生じます。
《症状》
トリコスポロンはきわめて小さいので、吸い込まれやすく4から6時間後に、咳や痰や発熱および倦怠感などの風邪症状が起こり、さらに進行すると呼吸困難が出現します。症状は、その環境から離れると軽減、消失しますが、その環境に戻ると悪化します。また、慢性的にトリコスポロンを吸い込むと、肺は固くなり日常生活に支障を来す可能性もありますので注意が必要です。
《診断》
1)症状および生活環境などの問診。
2)胸部聴診でバリバリという雑音が聴取されます。
3)胸部レントゲン(胸部CT)ではスリガラスのような異常陰影が認められます。
4)血液検査では、炎症反応が認められ、トリコスポロンに対する抗体が検出されます。
《治療》
第一の治療は、原因となるトリコスポロンという抗原を回避することです。つまり、自宅や職場の環境を改善することで、症状は改善および消失します。それでも、症状が変わらない場合には、ステロイド剤を服用したり、入院して治療する必要があります。
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2017年7月 5日 水曜日
朝日新聞に連載vol1
Q
喘息持ちの友人がいます。喘息とはどのような病気ですか。また、発作を起こした時周囲の人ができることはありますか。
A
《定義》
気管支喘息は気道に慢性的炎症があり、色々な刺激に反応して起動が敏感になって発作的に起動が狭窄する病気です。
《原因》
ハウスダスト、ダニ、ペットのフケ、カビなどのアレルギーによることが多いのですが、ストレス、感冒、喫煙、花粉、不眠、疲労などもあります。
《症状》
発作的に咳や痰が出て、ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴って息苦しくなります。夜間や早朝に出やすいのが特徴です。
《診断》
このような症状を繰り返していれば、喘息の可能性があります。呼吸機能検査では起動が狭いかどうかを調べます。また、血液検査でアレルギー体質かどうかを検査します。
《治療》
喘息治療の目標は、運動を含めた日常生活に支障がないよう呼吸機能を正常に保つことです。主な治療は、吸入ステロイド薬で、炎症を改善して発作を起こさないようにする予防治療です。発作が起こったら、先ず、即効性のある気管支拡張薬を吸入し、周囲の方は患者さんの意識状態、爪の色、唇の色などを観察して酸素が十分かどうかを観察し、起座の状態を保ち、何度か吸入を繰り返しても症状が改善しなければ早急に医療機関を受診させてください。
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