寺尾クリニカブログ

2026年9月21日 月曜日

なぜ今?今年インフルエンザの流行が早いのか?

当院でも9月に入り、インフルエンザA型の患者さんが受診されるようになりました。中学校ではすでに学級閉鎖が出始めるなど、例年より早いペースで流行が拡大しています。新宿区でも9月下旬からインフルエンザワクチンの接種が始まりますが、なぜ「冬の病気」であるはずのインフルエンザが、これほど早く流行しているのでしょうか?
そこには、複数の要因が複合的に影響しています。

1. 国際的な人の往来とウイルスの持ち込み
日本の夏〜秋にあたる時期、南半球(オーストラリアなど)は冬の流行期を迎えています。渡航者や訪日観光客(インバウンド)の増加に伴い、季節外れであっても国内へウイルスが持ち込まれる機会が大幅に増えています。

2. 猛暑と冷房による「換気不足」と「乾燥」
記録的な猛暑で長時間エアコンを使用するため、室内の窓を閉め切りがちになり、密閉空間でウイルスが滞留しやすくなります。また、冷房による室内の乾燥も、ウイルスの生存や飛沫感染に適した環境を作ってしまいます。

3. 暑さ・夏バテによる自律神経の乱れと免疫力低下
猛暑による体力消費や睡眠不足、また「酷暑の屋外」と「冷房の効いた室内」との激しい寒暖差によって自律神経が乱れ、体の抵抗力(免疫力)が低下して感染しやすくなっています。

4. 抗原変異株(サブクレードKなど)の出現
流行しているウイルス(A型H3N2の一部など)に変異(抗原ドリフト)が起きると、従来のワクチンや過去の感染で得た抗体が効きにくくなります。こうした変異株が既存の免疫をすり抜けることで、早期からの感染拡大につながります。

5. 社会全体の集団免疫の低下
ここ数年の感染状況の変化により、社会全体でウイルスに対する抗体を持っている割合(集団免疫)が低下しています。また、日常的な感染対策の緩和も早期拡大を後押ししています。

【院長からのアドバイス
「まだ秋だから大丈夫」と油断せず、人混みや通院時、体調がすぐれない時などは不織布マスクを正しく着用しましょう。あわせて、こまめな手洗増や適度な室内換気を心がけ、新宿区は9月下旬からですが、ワクチン接種も早めにご検討ください。

投稿者 寺尾クリニカ | 記事URL

2026年9月21日 月曜日

注意すべき女性のがん―予防が大切です

女性には、女性だからこそ注意してほしいがんがあります。

そして、その中には「予防できる」「早く見つけることで治療につなげられる」ものもあります。

今回は、これまでブログで取り上げてきた内容を、女性のがん予防という視点から、もう一度整理してみます。

特に知っておいてほしいのは、

① 子宮頸がんとHPV ② お酒と乳がん ③ 肥満とがん

この3つです。

そして、もちろん禁煙も重要です。

① 子宮頸がんは「予防」が大切

子宮頸がんは、女性にとって決して他人事ではありません。

特に若い世代にも発症するがんで、20代、30代の女性にも注意が必要です。

日本では、毎年1万人以上の女性が子宮頸がんと診断され、約3,000人が亡くなっています。

さらに、30代までに子宮頸がんの治療によって、妊娠・出産に影響を受ける女性も少なくありません。

子宮頸がんの多くは、性交渉によって感染する**ヒトパピローマウイルス(HPV)**が原因です。

だからこそ、予防が大切なのです。

現在、小学校6年生から高校1年生相当の女子には、HPVワクチンの定期接種が公費で行われています。

9価HPVワクチンなどによって、子宮頸がんの原因となるHPV感染を大幅に防ぐことができます。


ただし、

ワクチンを受ければ100%大丈夫、というわけではありません。

そこで重要になるのが子宮頸がん検診です。

20歳を過ぎたら、定期的に検診を受けることが大切です。

子宮頸がんは、がんになる前の**「前がん病変」**の段階で見つけることができます。

HPVワクチン+子宮頸がん検診。

この組み合わせが、子宮頸がん予防の基本です。

② お酒は乳がんのリスクを高めます

「お酒は肝臓に悪い」

これは、多くの人が知っていると思います。

しかし、お酒は肝臓だけの問題ではありません。

女性の乳がんのリスクも高めます。

女性は男性よりも体質的にアルコールの影響を受けやすく、比較的少ない飲酒量でも、がんのリスクが高くなることが分かっています。

国立がん研究センターの研究では、1日の平均アルコール摂取量が23g以上になると、乳がんになるリスクが高くなることが報告されています。

23gは、おおよそ ビール500ml 1本 または 日本酒1合 に相当します。

「これくらいなら大丈夫」

と思っている女性もいるかもしれません。

しかし、がん予防という観点から考えると、

お酒は飲まないことが最も安全です。

特に、毎日飲酒している女性は、一度自分の飲酒量を見直してみてください。

③ 肥満も女性のがんリスクを高めます

「太っていると生活習慣病になる」

これはよく知られています。

しかし、肥満はがんとも深く関係しています。

女性の場合、BMI 30.0~39.9の肥満では、がんによる死亡リスクが25%高くなることが報告されています。

特に注意したいのが、閉経後の肥満と乳がんです

閉経後の肥満は、乳がんのリスクを高めることが分かっています。

さらに、BMIが高くなるほど、

子宮内膜がん 大腸がん 肝がん などのリスクも高くなります。


だからといって、「痩せれば痩せるほど健康」ということでもありません。

以前にも書きましたが、やせすぎにも問題があります。

がん予防という観点からも、男女ともにBMI 21~25程度の適切な体重を維持することが大切です。

女性の皆さんに、もう一度伝えたいこと

HPV感染、アルコール、肥満。

これらについては、これまでのブログでも取り上げてきました。

今回は、それを「女性のがん予防」という視点から、もう一度まとめました。

子宮頸がんは、HPVワクチンと検診。

乳がんについては、飲酒を見直す。

そして、


肥満にならない、やせすぎない。

さらに、これは女性に限ったことではありませんが、

禁煙も非常に重要です。

「自分はまだ若いから大丈夫」

と思わないでください。

がん予防は、病気になってから始めるものではありません。

今日からできることを、一つずつ始めることが大切です。

女性の皆さんには、ぜひ一度、自分自身の生活習慣とがん予防について考えてみてほしいと思います。

当院でもがん予防対策も行っておりますのでご連絡下さい。

(HPVワクチンの接種、禁酒治療、禁煙外来、ダイエット外来など)

投稿者 寺尾クリニカ | 記事URL

2026年9月10日 木曜日

日本においておとなの発達障害が増えた理由

おとなの発達障害が注目され、診断を受ける人が増えた理由には、「当事者の数が増えた」ということではなく、社会環境の変化、医学の進歩、そして診断基準や支援制度の整備といった複数の課題が重なり合っています。

1. 現代の職場環境の高度化
かつては許可されていた特性が、現代の労働環境では「障害」として表面化しています。
高度なシステム化と自己管理:平成時代以降の大幅な情報化により、職場では高度なシステムへの対応、多数の仕事の同時並行、シビアな自己管理が求められるようになりました。

2. 医学の進歩と「変わり者」からの脱却
かつては医学的な診断の対象とならなかった人々が、正しく理解されるようになりました。
概念の変化:以前には「変わり者」などと片付けられていた人々が、医学の進歩により「脳機能の偏り」を持つ発達障害者として認識されるようになりました。

知的障害を伴わない層の認知: 1980年代以降、知的障害のない発達障害(高機能自閉症やアスペルガー症候群など)が社会的に認知され、診断の対象が広がりました。

3. 学生時代との環境のギャップ
学生時代まで​​は隠されていたことが、社会人になって初めて暴露されることなりました。
決められたスケジュールで動く学生時代は、周囲のカバーや本人の学力によって問題が隠れていることがあります。

社会に出ると、自分が他人と比べて違いあることを初めて自覚し、生活上の困難が覚悟します。

4. 診断基準と治療薬の整備
診断基準の普及:国際的な診断基準であるDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)などの普及により、医師が診断を下すための共通の評価が確立されました。

成人向け治療薬の:日本でも2012年以降、ADHD(注意欠如・多動障害)の治療薬(アトモキセチンやメチルフェニデートなど)が18歳以上の成人に対しても認可されたことが、医療機関の受診の動機となりました。

5. 社会的な啓蒙と支援法成立
発達障害者支援法施行: 2005 年の「発達障害者支援法」成立により、それまで支援の谷間に置かれていた人々への法的承認ができました。

メディア等の影響:専門家による啓発書籍出版や、事件・社会問題との関連で発達障害が報道される機会が増え、本人が「自分も今日はどうか」と気づき、自ら医療機関を訪れるケースが増えました。

まとめ
これらの課題が組み合わさることで、潜在的だった「変わり者」が医学の進歩により「脳機能の偏り」を持つ発達障害者として捉えられるようになり、本人が「自分はどうか?」と疑い、自ら医療機関を訪れるケースが増えました。さらに、医学的には医師が診断を下すための共通の評価が確立され、日本でも2012年以降、ADHD(注意欠如・多動障害)の治療薬が成人に対しても認可され、さらに社会的な啓蒙も広がり、医療機関受診の動機となりました。その結果、おとなの発達障害と診断される人が急増していると考えられます。しかし、まだ日本における発達障害者への対応には依然として多く問題があります。


投稿者 寺尾クリニカ | 記事URL

2026年9月10日 木曜日

酒で亡くなる人はどれくらいいるのか―医師として見てきたアルコールの怖さ

「酒は肝臓に悪い」

これは、多くの人が知っていると思います。

しかし、アルコールが長期間にわたって身体を壊し、最終的には命を奪うことがあることを、どこまで理解しているでしょうか。

WHOによると、2019年には世界で約260万人がアルコールによって死亡したと推計されています。

アルコールによる健康被害は、大きく考えると、

①肝臓の病気
②がん
③その他の病気

に分けて考えることができます。

① 肝臓の病気
長期間の飲酒によって、アルコール性肝障害、アルコール性肝炎、肝硬変、肝不全などを起こすことがあります。

私は現在も、肝硬変の患者さんを何人も外来で診ています。

勤務医のときに、食道静脈瘤が破裂して大量出血を起こし、亡くなった患者さんも何人も経験しています。

肝硬変が進行すると、門脈圧が上昇し、食道などに静脈瘤ができることがあります。

普段は症状がなくても、破裂すると突然、大量に出血して命に関わります。

「酒を飲み過ぎると肝臓が悪くなる」というだけではありません。

その先には、肝硬変、食道静脈瘤破裂、肝不全という命に関わる病気があります。

② がん
アルコールは、さまざまながんとも関係しています。

特に、口腔・咽頭、喉頭、食道、肝臓、すい臓、大腸、乳房などのがんとの関連が知られています。

私はこれまで、食道がんの患者さんも実際に治療してきました。

食道がんでは、飲酒だけでなく喫煙も重なっている患者さんを多く経験しています。

また、肝がんが進行すると、腹水がたまる患者さんも少なくありません。

お腹が大きくなり、食事が取りにくくなったり、息苦しさが出たりすることもあります。

がんになってから治療するのではなく、がんにならないために何ができるかを考えることも大切です。

③ その他の病気
アルコールの影響は、肝臓とがんだけではありません。

高血圧、心臓の病気、脳卒中、膵炎、胃炎、逆流性食道炎、腎臓病、糖尿病、脂質異常症、アルコ-ル依存症、うつ病・不安障害など、おおくの病気に関係します。

つまり、アルコールは一つの臓器だけを傷めるものではありません。

身体全体に長期間の影響を与えるものなのです。

このように、アルコ-ルは全身に悪影響を及ぼし、重篤な疾患に至る可能性があります。外来では脂質異常症の患者さんが多いですが、多くのかたがアルコ-ルを飲んでいます。

アルコ-ルをやめるか、減らすことによりかなりの病気が減り、健康的な生活を送れると考えます。

投稿者 寺尾クリニカ | 記事URL

2026年8月26日 水曜日

胃がんは「予防できるがん」ピロリ菌除菌の大きな意味

日本では、胃がんは年間約10万~12万人が新たに罹患し、年間約4万人が亡くなっている、非常に頻度の高いがんです。

これほど多くの人がかかる胃がんですが、その大きな原因となっているのがヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)感染です。

つまり胃がんは、発症してから治療するだけではなく、発症する前から予防を考えることができるがんなのです。

ピロリ菌除菌には、どんな意味があるのか
ピロリ菌を除菌することで、胃がんの発症リスクを低下させることができます。

文献では、除菌によって胃がんリスクが約34%まで低下したという報告があります。

特に重要なのは、胃粘膜の萎縮などが進行する前、つまりできるだけ若い時期に除菌することです。

胃がんのリスクを高める変化が長年にわたって進行する前に、原因の一つであるピロリ菌を取り除く。

これが胃がん予防の大きなポイントになります。

日本では「除菌」の効果が特に大きい
ピロリ菌除菌の効果を、NNT(1人の胃がんを防ぐために必要な除菌人数)で見ると、日本では非常に興味深い数字があります。

文献によれば、

日本人男性:約15.3人

日本人女性:約23.0人

つまり、15~23人を除菌することで、1人の胃がんを防ぐことができるという計算になります。

胃がんの罹患率が高い日本だからこそ、ピロリ菌除菌による胃がん予防の意義は非常に大きいのです。

これは単なる「感染症の治療」ではありません。

将来のがんを減らすための予防医学なのです。

ただし、除菌すればすべて終わりではない

ここは非常に重要です。

すでに萎縮性胃炎などの胃粘膜の変化が進んでいる場合、ピロリ菌を除菌した後も胃がんのリスクが残ることがあります。

したがって、

「ピロリ菌を除菌したから、もう胃がん検診は必要ない」

ということではありません。

むしろ、

ピロリ菌除菌+定期的な胃の検査

という二段構えが重要です。

除菌によって胃がんになるリスクを下げ、残ったリスクについては定期的な検査で早期発見する。

もし胃がんが見つかったとしても、早期であれば内視鏡治療などで根治できる可能性があります。

がんは「なってから治す」だけではない
私はこれまで、がん患者さんの治療について多くの記事を書いてきました。

しかし、がん医療で本当に大切なのは、治療だけではありません。

「がんにならないようにする」ことも医療です。

胃がんは、そのことを考えるうえで非常に分かりやすいがんです。

ピロリ菌という大きなリスク因子を知り、必要な人は除菌する。

そして、除菌後も定期的に検査を受ける。

胃がんは、発症してから治療するだけではなく、発症する前からリスクを下げることができる。

これこそ、予防医学の大きな意味だと思います。

皆さんも、病気になってから考えるのではなく、病気になる前にできることを考えてください。

予防医学を身につけ、健康に生きていきましょう。

投稿者 寺尾クリニカ | 記事URL

カレンダー

2026年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

月別アーカイブ

寺尾クリニカ ホームページを見たとお伝えください 電話番号:03-5338-9955 平日9:00~13:00、15:00~19:00 土曜日9:00~13:00 定休日:日曜・祝日
アクセス


大きな地図で見る
【住所】
〒169-0073
東京都新宿区百人町3-28-5 グランドヒルズA

詳しくはこちら